平成28年登山記録 北アルプス縦断

種池山荘より笠ヶ岳まで  7泊8日

一日目(9月24日) 自宅出発、午前4時、信濃大町駅前駐車場にマイカーを置き、バスにて扇沢へ移動。 9時14分登山開始、昨年も歩いた柏原新道を登ること3時間40分、午後12時58分頃種池山荘へ到着、お湯を沸かしカップヌードルを食べる。 しばしの休憩で新越山荘を目指し出発、岩小屋沢岳を越え小屋に15時30分頃到着する。 今日までの営業と聞き、驚きと運の良さを感じた。宿泊客は十数人であった。 早速ビールを飲み、持参した日本酒(菊水)を飲みながら出会った方々と話をすると、針ノ木方面から来た方々が多かった。また、明日、針ノ木雪渓を下るという人もいたが、今年は針ノ木雪渓には一つも雪がないとの話だ。 夕食時に最後の晩なので宿泊客にも飲み物のサービスがあった。蓮華越えをするという方は居ないようだった。午後19時就寝に就く。 二日目(9月25日) 天気予報は晴れである。出発午前5時、鳴沢岳-赤沢岳-スバリ岳-針ノ木岳9時24分頃に通過。 針ノ木岳はやっと山頂かと思うとその先にまだ登りが続いている。やっと山頂に着き、小休止後出発、今日の登山タイムは地図では11時間である。 蓮華岳‐北葛岳-七倉岳とアップダウンの激しいコースだ。歩くのも嫌になってしまうほど厳しかった。船窪小屋には16時40分ごろに到着した。 小さい小屋で裏口かと思えるほどの入口で靴脱ぎスペースは半畳ほどである。脇に立っている下駄箱に靴を入れると言うが、着いたときは夕食の配膳中だった。 着いた時間が遅いので素泊まりの手続きをした。5時からの夕食者が終わり、2回目のグループは5時半過ぎであった。 ゆっくりと食べている方々で、自炊スペースも同じ場所なので終わってからでなければ出来ない。7時からお茶会をやると言う話だ、やっと6時半頃に自炊を初めるとすぐに7時になってしまった。 アルファー米のドライフードなのでお湯を入れて待たなければならい旨を伝へ、隅の方で静かに食べながら話を聞いていた。どうも今夜のお客は、皆この小屋に関係がある方々の様子であった。小屋の生い立ちの話などを聞いたのち自己紹介が始まった。 私も番が来たので少し話した、最後に明日は烏帽子方面に行くと伝えた。話によると登山コースが崖の崩落でだいぶすごい所があると言う。 ここへ着ている方々は七倉ダムから登ってきたようであった。着いたとき外で話した若い3人は、明日は船窪乗り越から針ノ木谷へ下り黒部湖で渡船して五色が原へ行くという。照明は無くランプの明かりが唯一である。トイレは外のみで、女性用は中に一つあるみたいであった。20時就寝に就く。 三日目(9月26日) 天候、雨、雨量1~2mm、午前5時出発、霧雨が降っているので雨具をつけての登行である。このコースは今回の縦走で一番の危険コースであった。 船窪小屋より船窪乗り越までは、真砂のざらついた、すべりやすい道のり、アップダウンが続く高度が低いので森林帯である。 分岐点を過ぎると、いよいよむき出しの状態、がけ崩れの山が目に付いてくる。斜め状態で道幅5~60センチ、片側が崖切れ落ち、反対側はハイマツ帯、一度滑ったらそのまま崖を止まることなく数百メートル下の谷底へ消えてゆくだろう。はしごやロープが続く、とても危険なコースだ。一番のすごい所はナイフエッジというのだろうか? 両側のがけが切れ落ち歩く幅は田んぼのあぜ道程度(40cm)、太さ10mmのグリーン色のロープが渡してあった。長さは約10m位、コースの中央で長さ50㎝深さ30㎝程度の切れ込みが出来ている、足は片足しか乗らないぞくぞくするような所です。難なく立って歩いたが、烏帽子小屋に着いたとき同じコースを歩いた人が他に4人いた。 皆悲鳴を上げるようなコースと表現する。風の強い時は這って移動するか、コース変更の後戻りを検討するだろう。 不動岳を過ぎるとコースも安定してき、南沢岳からは難所は無くなる。 烏帽子岳の分岐点にザックをデポして、15~6分で頂上に着く、頂上は鎖場だ、それをよじ登ると二つに割れていて片側は屋根勾配で、大きさ1坪程度の岩が横たわっている。あまり乗った痕跡は無いが、よじ登ってみると先端に太さ20㎜程の鉄の棒が刺さっていた(私はここに立って眺めてきた)。 もう一方のトサカ状の岩は登ったら下りられないと思えるようで1m弱高い。 山頂は手短に済ませ、デポしたリュックを背負い烏帽子小屋に入った。今日のコースタイムは8時間25分であったが1時間40分遅れの到着16時頃。 四日目(9月27日) 午前5時18分出発、天候晴れ、朝から雲が無く、高い山の下には雲海が広がっている。日の出とともに雲海も消えてゆき、遠く富士山までもが見える。 360度の展望はこれまでの北アルプス登山では初めての事の様な気がする。今日のコースタイムは10時間の予定なのでゆっくりしている暇はないが、遠くまで見える。 景色を楽しみながらの山歩である。三つ岳を越え、黒部五郎岳まで来ると周囲は明るくなり山の色もはっきりしてきた。紅葉もこれまでの所よりも色がしっかりしているように感じる。 真砂岳、東沢乗越、この辺までが雲の無かった時間帯である(10時頃)。目の前には水晶岳が見えてきた、登り口の岩の色は赤い崖が続いている、息を切らしながら登って行くとヘリコプターが飛んできた。水晶小屋は営業を終了し小屋の工事を始めるところだった。 荷物をここにデポし、身軽にして水晶岳(11時11分)を登頂し、1時間ほどかけて戻ってきた。 ワリモ岳分岐を雲の平方面に行かず、鷲羽岳を目指す。鷲羽岳(13時42分)を通過して下ると今夜宿泊する三俣山荘を目指した。 到着14時43分、今日は天気も良かったせいか、疲れも感じつに歩く事が出来た。昨日まで小屋で一緒だった方は誰も居なくなった。 雲の平から登ってきた方、双六小屋から来た方である。黒部五郎小屋は25日で小屋終いという。時間も早いので外のベンチで、山形から3人で来ていた年齢も同じくらいの方と、ビールと持って行った日本酒を飲みながら話題が弾んだ。5時からの夕食を済ませると談話室で色々な方と情報の交換や、これまでのコースの話などをした。 19時半就寝に就く。 五日目(9月28日) 天気予報は雨、雨量は1~2mmとなっていた、一昨日と同じくらいかと想像しながら長袖シャツの上に合羽を着て小屋を出た。 午前5時10分、外に出ると霧雨が降っている、視界は10m程しかない。暗くてヘッドランプの光が届かないのだろうと思いながら歩き始めると、近くのキャンプ場には二張りのテントが床下浸水のような状態で建っていた。テントの撤収を始めている方に登山コースが分からないので聞いた。二人ほど私の前を歩いていたが、コースを間違えてしまっているようで、うろうろしていた。 私が前になって歩いたが暫くすると後ろに離れていった。今日は昨日より短いコースタイム(8時間15分)なのでペースを上げずに行くつもりでいた。雨がだんだん強くなり風も吹き始めた。 嫌な予感がし始めたが、三俣蓮華の山頂を目指した。6時4分頃に山頂通過、7月末に来た時もこの山は雨だった。 写真を撮ることもやっと状態だ。双六岳の山頂はあきらめて、中道を歩くことにした。7時45分双六小屋に着いた。 外には3人ほどいたので、今日の天気予報の話をしてみた、雨だけど出かけるということだった。リックを下すのは雨のため止めて、ドライフルーツを少し口にして休むことなく歩くのを続けることにした。弓折岳の山頂は判らないうちに通過してしまった。弓折岳分岐点で笠ヶ岳から一人で下って来た方と出会い少し話した。 秩父平あたりはコースが見にくいという。雨のため地図を見ることもできない。視界は10~30m、周りの山は全然見る事が出来ない、ただただ高い方へ歩を進めるだけである。 大ノマ岳を登る頃、雨は豪雨となり消防のホースで弾かれているような勢いと猛烈な風であった。全身ぬれねずみになってしまった。 雨具は着けているが中の服は絞ると水が垂れるほど濡れている。冷たい、寒い、「まずいなぁ-」と思いながら登り続ける。山頂直下でコースが壊れている。 山頂を目指し高い方へ歩いた足跡を登った。山頂に木標は無く、石が積んであるだけだった。すぐ下りの方へ足を進めていった。雨は弱まらずにますます強くなる。下って行くと目の前に出てきたのは、さっき通過したときに見た「笠ヶ岳-弓折岳」の標識である。 歩く方角が逆になってしまっている。周りの目標が見えないために、山頂から下るとき戻されてしまったようだ。 気を取り直し登り始めた、山頂直下でコースがトラバース状になっていたのだ。 この辺から雨はますます強くなり、登りコースは土石流が始まっていた。足元は砂利がピンポン玉大や握りこぶし程の石が色を変えた水と一緒に音を立てて流れ落ちてくる。 足元が流れて戻されながら、とにもかくにも上へ上へと登った。寒い、冷たい、疲れ、おなかが痛くなってくる。 止まったら低体温で動けなるだろうと思い、休まずに歩き続けた。 秩父岩通過13時、あと何時間体がもつのだろうと感じながら、とにかく歩く、止まるな!と自分に言い聞かせて歩く。13時22分抜戸岳山頂、ここには頂上の表示がしてあった。この山も頂上付近でコースが判りづらくなっている。 直下がトラバースになっている。頂上で地図を見たので今度は間違わずに進む事が出来た。あと何時間で小屋に入れるのだろうと思いながら歩き続けた。 15時46分倒れることなくやっと笠ヶ岳山荘までたどり着く事が出来た。 所要時間:10時間40分(コースタイムは8時間15分)悪天候の中の山歩でした。 六日目(9月29日) 昨夜は一部屋一人という宿泊者全員で7人、雨は止むことなく続いている。夜半に携帯電話の機内モードをきってみると電波が入る状態であったので、天気予報を調べると30日午前2時から晴れの表示になっていた。迷わずに29日は連泊することを決めた。 朝起きると3人は笠ヶ岳からクリヤ谷を下るという。 渡床が何か所もある危険なコースのはずだ。私と埼玉から夫婦で来ていた方の3人は連泊を決めた。一人は双六岳の方へ向かった。 七日目(9月30日) 3時半に起きた。外を見ると砂を蒔いたような星空が広がっている。一日伸ばしたのが正解と思いながら暗い中で沸かしたてのコーヒーを一人で飲んだ。 4時過ぎにドライフーズを食べたが味も飽きているせいか、29日のストレスによる体調不良が出ていた。5時半、明るくなってきてから小屋を出て、笠ヶ岳山頂を経て下山を開始した。 この下山コースも結構な急斜面である。岩場を注意しながら下る6時間ほどのコースだ。水場辺りから下の岩は、苔が生えていて滑りやすい岩だ。クリヤ谷の沢は3か所ほど渡床があった。初めの2か所は靴を濡らしながら渡る事が出来た。一番下の穴滝の渡床は石に乗っても、靴が潜るほどの水量で流れている。靴の上からビニール袋を履き、岩の上を渡ろうとしたが、水の流れが強いのでストックを使っても足のバランスを崩し尻餅をついてしまった。 腰まで濡れてしまった。浅い所でも膝までの深さである、流れの強い所は石の上に乗りながら、渡る事が出来た。後からこのコースを渡ってくる予定の人は夕べ一緒になった5人がいる。大丈夫だろうか?と心配しながら下って行った。 新穂高の川筋に無料の露天風呂があったので、7日分の垢を落として帰路に就いた。 今回の6日間で踏破したログデーターは扇沢登山口より入山し柏原新道・種池山荘・岩小屋沢岳・鳴沢岳・赤沢岳・スバリ岳・針ノ木岳・蓮華岳・北葛岳・七倉岳・船窪岳・不動岳・南沢岳・烏帽子岳・前烏帽子岳・三ッ岳・野口五郎岳・真砂岳・水晶岳・ワリモ岳・鷲羽岳・三俣蓮華岳・双六岳・弓折岳・大ノマ岳・抜戸岳・笠ヶ岳。 新穂高温泉登山口までのDIYGPSログを見るとトラック数:5、ポイント数:621、平面距離:63.1km、沿面距離:65.2km、記録時間:69時間01分18秒、最高高度:2965m、最低高度:973m、累計高度(+):6238m、累計高度(-):6710m、平均速度:0.9・m/h、最高速度:4.8km/hであった。 帰路道程:バスにて新穂高-平湯温泉-松本バスターミナル。列車にて松本駅-信濃大町駅、駅前駐車場よりマイカーで帰宅。

四日目 船窪小屋から烏帽子小屋へ

五日目 船窪小屋から烏帽子小屋へ

六日目 船窪小屋から烏帽子小屋へ

一日目 扇沢から新越山荘

二日目 針の木岳越えて船窪小屋

三日目 船窪小屋から烏帽子小屋へ

六日目 船窪小屋から烏帽子小屋へ

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